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5.ワカンタンカ
ただ、静かすぎた。意識が戻っていくと感じながら、体はもどかしく動かない。触感も、視覚も動かないうちから耳だけは情報を得ようとしている。その耳からはただの無音しか拾えなかった。
湊はしばらくして、それがどれほど経ってからなのか定かではないが、とにかく、鉛の体を横臥して、ゆっくりと目を開けた。
そこはとりあえずベットと、エリーゼが居たが、部屋は冷たそうな石の部屋だった。
「監獄?」
湊の乾いた、そしてかすれる声にエリーゼははっと顔を上げた。涙で赤く腫れたその顔と、恐ろしげな目が湊に向かう。
「そう……、なんだぁ。」
湊はかすかに入る光の帯に目を向けた。外はすっかり月が出ていて、淡い光が格子の入った小さな窓から降りている。
「魔獣使い?」
エリーゼは黙っていた。その内心ぐらい予測できそうなほど冷たく恐れた目に湊は目を閉じた。
-----最初あったときから、おかしな人だと思っていた。……、か。
「おい。」
これもまたかすれた声が頭上から聞こえる。
「アキ?」
「ああ。起きたか?」
「何とか。」
静かすぎるここではかすかな声でもよく響く。
「現状、」
「分析しろってか? どうせ、ぶっ倒れたときに、運ばれたんだろ。運が悪いのは、同じ場所に居る彼女たちだけど。」
「あ、ああ。そうだね。そちらも女性?」
「少しだけ熟女かな?」
「は! 物はいいようだね。さて、どうします?」
「体は?」
「もそっとという感じ。」
「あと少ししか時間がないぞ。」
「そうだね。なんか、吹っ切れると、いろんなことが解ってしまって。嫌になるよね。」
「そうだな。」
湊と彬人はそれっきり目をつぶり深い眠りに入った。
二人の思考はあの日に遡っていく。大袈裟に引っ張り力に逆らいもせず、二人は深く深く眠っていく。
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