16
花鳥風月〜抱いてください〜

「愛しい人を亡くした貴方、
私を助けてください
私の愛しいお方は屍に
私を置いて屍に

私をずっと愛しても
抱いてもくれません

だから貴方が私を愛してください
だから貴方が私を抱いてください」

夢の中の少女の微笑み
手を広げてそこに座る
何故俺の夢に出てくるのか
しかも今夜のように月が怪しく
桜が満開のときに限って

風が俺の髪を撫でる
桜が散る
月が怪しい

「私を抱いてはくれないの?」

振り返ればそこに
あの少女が居る

「お前は?」
「舞姫」

あの少女
鳥になって飛んでいく
月に向かって
飛んでいく

私を抱いてください
愛する人を亡くした貴方
私を
抱いてください


17

愛しい人よ
ここでまた逢おう
終わりのない
この世の中で
初め愛した人よ

桜の花よ
またここで咲いてくれ
終わった春の今でさえも
咲いていてくれ

時代よ
また我を生かしてくれ
この身よりも大きな野望を抱く我を
戦乱の世に生かせよ

時代が巡る
幾重にも回る
同じ事を繰り返すものよ
また我を人として生かせよ



18

風に乗る鳥を見ている
しっかりと見開いて

仲間達が横たわる
動けぬ身体で
仲間を守るために座っている
話が頭上を鳥が舞う

今度生きることが出来るなら
あの鳥がいい
仲間とともに飛び
仲間とともに愛すべき人のために歌う

しかし我は修羅なのだ
修羅故に鳥にはなれぬ
修羅故に愛すべき人のために歌えぬ

我修羅故に
鳥になれない
修羅故に
平和には生きられない


19

風が髪を撫でて海を駆ける
疾走する風の中に私は馬兵を見た

勇みよく立ちたる馬の
飾りは少ないにしろ立派と言える馬上の騎士
若いながらもりりしく
整いし顔は幼さを隠すほどで
眼からこぼれる涙が
幼いと解るだけ

撫で急ぐ風の群
織れた旗の忙しなくなびく音
傷つきまだ息のある馬たち
首を取られた武将の傷つきし甲冑の立派な飾りも見える
若い騎士はただ黙って涙を落とす

何が戦じゃ
戦が如何にぞや
死して帰らざるものには如何にせむ
我とて仲間を助けれずに涙を流すことしか出来ず
初陣よりともに戦いし友
口惜しいのは戦ではなく
友を守ることの出来なかった我
憎し我
憎らしい我が顔
ときが戻るなら
もう一度仲間を守るために我は戦いたい

風が髪を撫でて海を駆ける
疾走する風の中で私は前世の自分を見た
仲間を守れず口惜しく馬上にいる
前世の我を……見た


20

月夜の晩にはいくらか平常心をお持ちでもお気をつけ下さいね
闇に潜む悪魔が貴方に人殺しをさせたいと待ちかまえていますから

夢の中にまりをつく少女を見たら要注意です
悪魔が貴方の心の闇を見つけて入り込み
時期を見て出てくるのを待っています

お気をつけなさい
自分の周りの闇に
貴方を狙っている悪魔の影がきっと見つかるから
恐れてはいけません
悪魔に恐れては悪魔を倒すことは出来ませんから

月に魅入られた者は
この満月の夜に必ず他人に変わります
月を見てください
今夜の月は満月かどうか


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