メリー・クリスマス

松浦由香


12月21日

ひなたとイヴは放課後、玲緒君の後を付けた。
 昨日のことが気になったのと、それを話すと、イヴが「いいこと」かも。と喜んだからだ。
 ひなたは嫌な気がする胸を押さえる。なんだか息苦しくて、悪いことをしている罪悪感が、重く頭をもたげ、何度帰ろうかと思ったか知れなかった。
 玲緒君は病院に入っていった。
 二人(?)はその前で出てくるのを待った。
 恐ろしく寒い中、二時間ほどが経って、玲緒君が出てきた。少し泣いたようで、顔が真っ赤だった。
 その時、イヴが玲緒君の前に飛び出て、ひなたも慌てて飛び出てしまった。

 ひなたと玲緒はイヴのお陰(?)で近くの公園のベンチに座っていた。
「ごめん、昨日のことが、気になっていたから。」
 ひなたが言うと、玲緒はただ頷いてイヴの頭を撫でた。
「お母さんの病院?」
「ああ。」
「何処が、悪いの?」
「事故で、意識不明なんだ。」
 ひなたは何も言えずに黙った。
「もう、一ヶ月。クリスマスで、一ヶ月。医者はいつ気付くかさっぱりだって。」
「そうだったんだ。じゃぁ、本当にごめん。」
「?」
「興味があったから、付けて来ちゃって。」
「いいって、気にすんな。昨日、変なこと聞いたから。」
 二人は黙って俯いたままで居た。風が冷たく過ぎるけど、ひなたは玲緒君の側で、玲緒君のお母さんには悪いけど、温かくなるほどだった。
「早く、良くなるといいね。」
 玲緒は頷いた。


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