メリー・クリスマス

松浦由香


12月22日

 終業式。

 すごく寒くって、終業式は相変わらず暇だった。

 成績表が返されている中で、急に玲緒君のお母さんの様態急変の知らせが入った。

 蒼白した玲緒君の顔と、荷造りを急かせる先生の声と、不思議がる周りの声。

 玲緒君が教室を出ていく間際、ひなたの方を見た。それはその隣の真宏君を見たのかも知れない、もしくは、他の子かも知れない。でも、ひなたは力強く頷いた。

「大丈夫だよ。」と力を込めて。

 

 ひなたは病院に行く前に家に帰った。これこそイヴにはもってこいだと思ったのだ。

 家に帰れば、イヴはとても猫がするような格好ではない姿で寝ていた。

 玲緒君のお母さんの様態が急変したこと、それを助ければ、いいことになるんじゃないかと説明すると、イヴは笑顔で頷いた。

 でも、少し寂しそうにも見えた。

 二人(?)は病院に急いだ。

 

 病院の外で、夜になるのを待った。

 受付できくと、まだ安心は出来ないが、とりあえずは、危機的状態のまま安静しているという。

 玲緒君のお母さんの病室だけ、消灯を迎えてなお明かりが灯っていた。

 イヴは猫の姿のまま木に登り、その突き出た枝がちょうどその病室であったことから、イヴはその枝の先端まで行って、病室を覗いた。

 病室で、ふと窓の外を見た玲緒が、イヴを見て立ち上がり、外に出てきた。

「何してんだよ。」

「心配になったから。」

「とりあえず大丈夫だから。お前が居てもどうしようもないし、風邪引くぞ。」

「でも、でも、心配なんだもん。」

「お願いだから、帰ってくれよ。病室で、お前の方が心配になっちゃぁ、看病できないから。」

 ひなたはそう言われて俯き、帰ることしかできなかった。

 玲緒君は、ひなたが病院の門から出るまで見送った。

 その門の上でイヴが居た。

「あとはあたしが見ててやるから、かえんな。明日の朝にでも来ればいいさ。」

 ひなたは頷いた。


次  へ        図書館へ戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送