メリー・クリスマス
松浦由香
12月8日
ひなたは、イヴと暮らし始めた。イヴは普段は野良の黒猫として、ひなたの家にいる。家族全員が動物好きなのが幸いした結果だ。
ひなたと二人きりになると、イヴは人の姿になる。
「ところで、毎日何処に行ってるんだ? 決まった時間に、その鞄を背負って。」
「学校よ。」
「学校? お前達も、サンタ見習いなのか?」
「違う。ただの小学校。」
「しょうがっこう?」
「解らなかったら別にいいよ。」
イヴは時にはひなたの姉であり、妹みたいな存在になっていた。それがひなたには嬉しかったりするのだ。弟が居るが、やっぱり同性の姉妹が欲しいものなのだ。
「ひな、あんた好きな子居るの?」
「何で?」
「否、もし居たら、くっつければすぐにでもサンタになれるからね。」
「私の願いはだめなんじゃないの?」
「あ、そうか。そうだった。」
イヴは口を尖らせて窓の外を眺めた。
ぼんやり。する事がない猫そのまんまの格好で。
「サンタになったら、どうなるの?」
「サンタになったら? そうだなぁ、尊敬される。みんなが羨ましがる。」
「でも、サンタっておじいさんだと思ってた。」
「それは人間が作り出した虚像。」
「きょぞう?」
「解らなかったらいい。」
イヴはそう言ってすとんと窓から居り、ひなたの膝の上に乗っかった。
「ああ、いつになったらサンタになれるのやら。」
イヴの言葉にひなたは笑う。
猫であるイヴのご飯は、おかかをまぶした、シンプルな猫まんまである。
いくら猫だって、猫まんまだけじゃぁねぇ。
イヴはそう言いながらも、その猫まんまをがっついて食べる。
変わったサンタ見習いなのであった。
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