誰が為に、その威(い)を射るか
〜規国物語〜
松浦 由香



序章

 昔の世界に、七つの国からなる大地があった。北に宗(ソウ)国。北西に更(コウ)国。西に規(キ)国。西南に朴(ホオ)国。南に濁(ダク)国。東南に楚(ソ)国。東に遵(ジュン)国。七国は宝器山(ホウキヤマ)という魔獣の住む山を取り囲んであった。
 時は春。政治不信から反乱が起ころうとしている規国が舞台である。

 七国一大陸の西に規と言う国がある。北に更国、南に朴国に挟まれた七国一領土の狭い国。
 しかし、山、海に恵まれ、七国三位の豊かな国であった。
 更国とは別峡(べつきょう=国境にある渓谷の名前)を境にし、朴国とは間に流れる蓉川(ようせん)を境にしていた。
 この蓉川、年によっては氾濫や、蛇行を変え、そのおかげで国境は毎年変わっていた。
 それが十年前、蓉川の流れを一定にする工事を行い、国境が定まったが、国境をめぐりと争ってきた頬国とはまだわだかまりがあり、冷戦中である。
 五年前、蓉川の平定と、国の平定と成長のため、規国の皇子若帝劉宏(りゅうこう)は北に広がる宗国に留学に向かった。
 宗国は北に広大な土地を構え、七国一国土も繁栄もしている国だ。
 その若帝が宗国に入ったか入らなかったかで、若帝は何者かの奇襲にあった。生死はいまだ掴めておらぬが、若帝の身分を証明する金釦だけは規国に届けられた。
 だが、規王はその事実を認めようとせず、若帝の母君である静宝院は病に伏してしまった。
 それから五年。気の狂いを生じた規王は悪政を行うようになっていた。
 国民の税金は、生まれ出て産声を上げたものから息をし続けるものすべてに課せられ、酒には通貨の十五割。ぜいたく品は三十割。衣服や装飾品に限らず、学問を学ぶための道具もぜいたく品とされている。そして食品すべてに五十割の値段が組まれ、人々は精一杯の生活を余儀なくされていた。

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