ベット
   
 耳に吹き付けてくる息で目が覚めた。妙に寒い朝だから、その鼻息が寒い。
 毛布にくるまり、頭から埋もれると、それを剥がそうとする外力に、私はむっとして手を伸ばす。
「痛い。」
「じゃない。寒いじゃない。」
 寝ぼけている二つのとろっとした会話。
 彼の大欠伸が聞こえ、彼は潜っている私を、布団をはぐって覗く。
「何してんだ?」
「寒いの。あんたの鼻息が。」
「しょうがねえだろ、鼻穴なんて動かせねぇじゃないか。」
「向こう向いて寝て。」
 彼は煩そうに私の言葉に従って向こうを向いた。でも、それってかなり寂しくなった。 私の頭は冴えて、思わず、背中をつついて起こす。
「煩い。何だよ。」
「こっち向いて。」
「あ?」
 そうだろう、そう言うと思ったよ。でも、「こっち向いて。」
 彼は面倒くさそうに寝返った。
 私は彼の腕の中に滑り込み、「暖かい。でも、頭が寒い。息するな。」
 などと無茶なことを言う。
 でも彼はそのまま私を抱きしめてまた眠った。
 少し明るくなってきた、七時前の一時。

Scene top



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