結婚
灰色の空。静かに落ちてくる雨音が、いろんな場所に当たって音を奏でている町。クリスマスに彩られた町が、更に賑わいを増している。 彼女は駅に立っていた。一人で立つには、本当に寒かった。でも、彼女は立っていた。 久し振りに来てくれる彼を待っているのだ。 彼女たちは遠距離恋愛中だ。もう二年にもなる。初めは毎日あった電話も、最近では月一になっているし、手紙は、もともと筆無精な彼の所為で、一方通行だし、メールに変えても、単語だけの彼だった。「帰った。」「寝る。」「疲れた。」でもこれでも、彼にしてみれば上等だと、思ってみるけど、やっぱり切なさや、寂しさは拭いきれない。 新しく好きな人が出来たんじゃない? そう聞ける勇気もなく、でも、それで二股されているのも嫌だし、彼を信じれない訳じゃないけど、でも、何故か素直に、信じることも出来ないでいる。 のは、遠距離の所為だけ? 彼女は俯いて息を吐いた。真っ白く、はっきりと見える吐息。すでに彼女が来て、彼が乗ってきてもおかしくない電車が二本過ぎている。 遅くなっても連絡くれないし、別に送れてきてもわびる奴じゃないから、彼女の気持ちがただ空回りするだけなんだけど、彼女はらちのない心配をするだけだった。 もしかして、これって、嫌がらせ? と思えてきた頃には、すでに三時間が過ぎていた。 今年の夏だった。二人で丁度中間にある海岸で待ち合わせをして、一泊しようと計画を立てていたのに、彼女の仕事の都合で、急に当日になっていけなくなってしまった。おまけに彼には連絡が付かず、ついたのは、その日の夜だった。 宿で、寂しく一杯やっていたという彼に、何度も謝ったが、それの仕返し? と思ってしまう。 電車の発車ベルが鳴り、今度も彼は姿を見せなかった。 彼女は空を見上げた。灰色の雲から降りる雨が雪に変わっていた。手や、足先が痛いほど冷たい。傘を首に挟んで、掌に熱い息を拭き入れても、何の解決にもならない。 もうほとんど泣きそうなほど、心配し、心細くて、寒くて、これで来なかったら、私はずっと、このままここに居るのかと思うと、今までの想い、何だったんだろうって、急に空しく思えてきた。 仰いだ空、冷たい雪。 「馬鹿。」 彼女が慌てて振り返ると、息を切らしている彼がいた。息を整え、まっすぐに彼女を見てから、「何時間待ってんだよ。家で待ってればいいじゃないか。」 ちょっと! と思いながらも、彼を見つめていれば、彼は大きく深呼吸をして「寝過ぎてさ、ちょっとお隣の県境まで行ってた。」と笑った。 もう我慢の限界だった。 「あたしがどれほど心配したか知ってるの? 電話でも出来たんじゃないの? こんな寒い中、ずっと居たんだよ。」 彼女の目から、涙が流れてきても、彼女は止めなかった。止めなかったと言うより、寒さで神経の伝達がうまくいかず、停まらないのだ。 彼はそれこそ始めた見た。彼女がこんなに泣いて、こんなに、可愛く見えたのは。 泣くから、可愛いとは言えないけれど、でも、少なくても、今の彼女は可愛い。 「ごめん。でも、家に帰っていてもさ。」 「帰れるわけないじゃない。貴方が来るのに。」 彼は満面の笑みで彼女を抱きしめた。可愛いことを言ってくれるじゃないか。だから、彼女を好きなんだ。 二人は暫くそうして抱き合ったあと、彼女の実家に、挨拶に行った。 「結婚させてください。」 |
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