前世幻想〜司〜
時刈吾郎物語

松浦 由香


1
 私にはやらねばならないことがある。
 だから、ここで朽ちるわけにはいかない。 しかし、眠くて、身体が、鋼にでもなったように、動かない。
 私の名前は倭 建。
 倭の国の皇子。大王のために、倭のために、戦をしてきた。
 しかし、私は倒れた。
 私を守っていた、草薙の剣を手放してから、傷を負い、倭を目の前にして、倒れた。
 運んできてくれる食に手をつけず、家臣に心配をかけている。
 しかし、今は眠りたい。
 解ってくれ。
 私にはやらねばならぬことがある。
 八又の大蛇のような、ものを作らないためにも、大王とともに、私の大王とともに戦わねばならない。
 目が、霞んできた。
 辺りに集まる見慣れた顔。
 私のことを、愛しんでいるものたち。
瀬津せつ。」
 私の言葉に、瀬津が顔を近づけてきた。
「お前は、これから、建だ。いいな。瀬津、お前は、建、だ。」
 皆が私を呼んでいる。
 だが、もう、それに答える術を私は知らない。

 私は、次に行く。
 巡らば、逢えるだろう。
 巡らば。



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