Honey joker

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 さらさらの髪の毛と、癖のある髪の毛の青年が、町を一望できる山の頂上に立っていた。山登りした様子は無い。現に彼らの後ろには、大型バイクと、黒いスポーツタイプの車があった。
「やっとだな。」
 黒いバイクスーツに身を固めた癖っ毛の彼が口を開くと、さらさらの髪の、ぱりっとスーツを着た青年は静かに口を開いた。
「くれぐれも、用心するんだ。何せ、ひどく憂鬱な気配が漂っている。」
「解ってる。それで、どうすればいい?」
「あそこに屋敷を構えよう。あたりのことは俺がしておくから、お前は彼女だけに集中するんだ。」
「解った。」
 癖っ毛は片手を挙げヘルメットをかぶり、バイクにまたがる。
「楊(ヤン)。」
 バイザーを上げる彼に一冊の本が投げられる。楊と呼ばれた彼はそれを受け取るとタイトルを見た。
「ハニージョーカー? 悪趣味なタイトル。しかも俺たちの写真じゃん!」
「それじゃぁ、屋敷で待ってる。」
 彼はそれだけ言うと車に乗り込み走り出した。そこに残ったのは車の吐き出した汚染物質と、一冊の本だけだ。
 楊は本を開き中を見て苦笑いをする。
「またまた、手の込んだことで。」
 楊はチャックを開け、その中に本を入れるとバイクを吹かして走り出した。
 本の中には「幻想獣」なるものがいた。人にあるあらゆる深層心理を見せる魔獣は、時にひどく、時に愉快なものを見せる。当事者のそのときの環境によって、見たくないもの、見たいものがはっきりと見える。
「さぁて、どこに置くかな?」
 楊は街角でバイクを停めた。

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